日本人は重症化する?グロインペイン症候群!!

ほんの20~30年前までは野球一色だった日本も今では様々なスポーツが出来るようになりました。サッカー、バスケ、クライミング、スカッシュなど自らが望めば出来ないスポーツはないといっていいでしょう。

どのようなスポーツでも盛んになってくれば増えてくるのがケガです。そういったスポーツに関わる疾患を総称してスポーツ障害というように呼ぶのですが、その種類は競技によって様々です。例えば卓球ならば腰痛がよく起こりますし、ゴルフならば、格闘技であれば体中のどこにでも障害は起こるものです。

今回はそんなスポーツ障害の中でも特にサッカー選手に多い股関節の疾患、グロインペイン症候群について記事を書いていきたいと思います。

グロインペイン症候群とは?

この疾患は股の関節・鼠径部(そけいぶ)に痛みを感じる疾患なのですが、実は股関節の一か所に痛みを感じる疾患ではなく股関節周りに起こる障害の総称でこのように呼ばれています。股関節という組織は上半身と下半身を繋ぎ、内臓を支え、身体の中心として日常のどんな体勢においても使用される箇所なので構造も複雑に出来ており、痛め方も様々なんです。

もちろんサッカー選手にだけ症状が現れるだけでなくラグビー、アメリカンフットボール、陸上(長距離走)など下半身をよく使う競技を行う選手に多いですが、やはり圧倒的に多いのがサッカー選手ですね。

この理由はサッカーに多い動きとサッカー独特のボールの蹴り方、他にも肉体的なストレスが原因で発症する場合もあります。

例えばサッカーをプレーしたことがある方はご存知だと思いますが、このスポーツは常に一人の人がボールを持っているのではなく仲間同士でボールを繋いだり、敵チームからボールを取りに行く動きが多いので、ボールを追いながらのストップ&ゴーが多く、一瞬で変わる局面に合わせてターンなども繰り返し行われます。

その動きの繰り返しによって鼠径部(股関節周辺)には体重の7倍もの負荷がかかるといわれており、これが一つの要因といえます。

そしてもう一つがクロスモーションと呼ばれるサッカー独特の動きです。ボールを軽く蹴り上げる時には必要ありませんが、鋭いシュート遠くへのパスを行う場合、私たちの身体の構造上、足を振り上げる時に右手、あるいは左手を挙げてインパクトの時には挙げた手を振り下ろす動作が必要になります。

この時、負荷は身体の中心にある股関節・鼠径部に集中することになり、この動作を繰り返し行うと鼠径部の可動性(柔軟性)、安定性(骨盤を支える力)、協調性(下肢の動きと体幹)などが機能低下を起こし、それによって過度の負荷がかかる場所に炎症が起こるということです。

では、この場合の過度の負荷というのはどういうことかというと、例えば右足をケガしたときは左足だけでひょこひょこ歩くように、極端に言えば右手をケガして物が持てないから左手ですべての用事をこなす(左手に負荷が集中する)ように動かなくなってしまった箇所を他の部分で補うために起こる負荷のことですね。

日本人に症状が強く出るのはなぜ?

実はこのグロインペイン症候群は日本で認知されるようになったのは最近ですが、昔からサッカーが盛んだった欧米ではよくある症状なのですが、あるサイトではこのように日本人の姿勢によって症状が強く出ると話されています。

長くスペインでトレーナーを務めた経験のある松井さんによるとグロインペインの症状は、スペイン人と日本人とでは異なると言います。

「日本人のほうが厄介ですね。それは、やっぱり姿勢から来ていると思うんですよ。スペイン人もそけい部や内転筋の付着部に炎症を起こすこともあるのですが、骨盤が上がった状態で動いているので、そこまで痛みは多岐に渡らない事が多かったです。でも、日本人の場合は骨盤が後傾して下がっているので痛みの要因が複雑なんです。股関節の周辺だけでなく、下腹部が痛くなったりとスペイン人に比べると症状が重くなります。その原因は立証されていませんが、骨盤の後ろが落ちた状態で動いていることが原因ではないかと僕は考えています」

引用:サカイク ~腹筋がグロインペイン症候群を引きおこす?~

確かに日本人は欧米人と比べれば体格も小さく、昨今では野球選手もサッカー選手も身体を大きくするトレーニングをよく行ってパワーをつける傾向がありますので、元々の骨格が小さな日本人には股関節をはじめとした膝関節足首の関節にかかる負荷は大きくなるといえるかもしれません。

グロインペイン症候群に限ったことではありませんが、こういった股関節や膝、肘、腰、足首などの疾患というのは初めから痛みを伴うことは少なく、なんとなく違和感を感じる、という所から症状が始まり、練習前後だけ痛む(プレー中はあまり痛くない)といったように痛みを感じていくようになります。

どのような疾患も早期発見・早期改善が出来れば早期復帰が見込めますので、身体のどこかに違和感や不調を感じた時は速やかに専門家に相談できるといいですね。