交通事故の後遺症とは?後遺障害との違いや診断の時期について

起こしても起こされても交通事故というものは厄介なものです。もちろん事故には自分の不注意で起こしてしまうものもあれば完全なもらい事故というケースもあるかと思いますが、後処理の面倒くささや保険屋さんとのやりとりは非常に煩雑になります。

あるいは今回の記事でご紹介する後遺症というものも非常に厄介な存在です。後遺症の中で一番、知名度が高いのはおそらくムチウチではないかと思いますが、ムチウチは単純に首を痛めるだけでなく、場合によって変形した骨が神経を圧迫してその痛みやしびれが腕や背中などに出ることもあったりと、なかなか全快しない事でも知られています。

もちろん交通事故など起こさないに越したことはありませんが、起きてしまった時に備えて交通事故の後遺症について確認しましょう。それでは記事を始めてまいります。

交通事故の後遺症と後遺障害の違い

交通事故によるケガで、治療をしても完治せず「症状固定(これ以上治療しても症状が改善しない)」と診断された症状のことを、「後遺症」と言います。交通事故で後遺症が残ってしまう代表的なものが「むちうち」で、例えばむち打ちの中でも事故の衝撃で自律神経まで傷ついてしまっている「バレリュー症状型」の場合、自律神経が乱されて慢性的な耳鳴りや頭痛、不眠などに悩まされることになったり、神経根が損傷を受けている「根症状型」の場合、片側上半身に痛みやしびれが残ってしまったりすることがあります。また身体的な症状だけでなく、PTSDやうつ病など精神的な症状が後遺症として残ることもあります。

これらの後遺症のうち、その精神的・身体的損害のせいで治療後に労働能力が阻害されてしまう症状のことを、「後遺障害」と言います。通常「後遺症」と「後遺障害」は混同されることが多いのですが、自賠責保険の支払い手続きにおいては「後遺症」なのか「後遺障害」なのかによって大きな違いが出てきます。というのも「後遺障害」の場合、後遺症のせいでその後の生活力が失われることになるため、自賠法施行令の定めによりその損害を補填する損害賠償の支払い義務が発生するからです。

しかし残った後遺症が「後遺障害」に当たるかどうかは、医師ではなく「損害保険料率算出機構」の判断にゆだねられています。従って医師から「後遺症が残るでしょう」と言われたとしても、それが必ずしも「後遺障害」として補償の対象になるとは限りません

交通事故の後遺症の判断時期

交通事故による後遺症と判断される時期、つまり「症状固定」と診断される時期は傷病の種類やその程度によって様々なのですが、大抵の場合受傷から6ヵ月以上を経て診断されることが殆どです。

例えばむち打ちの場合、頸部痛や頭痛、眩暈、耳鳴りなどの症状が表れますが、これらは客観的に捉えにくい症状であるため、症状の経過、通院日数などから判断されることになります。このため早くても受傷時から6ヵ月後、場合によっては1年以上かかってしまうこともあります。

一方レントゲンで客観的に症状を捉えやすい骨折や変形障害の場合、比較的早く症状固定と診断されます。とは言えギブスで固定するなどの保存療法ではなく手術による治療やリハビリを必要とする症状であった場合は、症状固定と判断されるまでに長い時間が必要になります。保存療法による一般的な骨折の場合で症状固定まではおよそ3~6ヵ月、手術やリハビリを必要とする場合は1年以上かかる可能性もあると考えておきましょう。

まとめ

今回は交通事故によって起こる可能性がある後遺症やその判断時期などについて記事を書いてまいりました。交通事故で起こる後遺症はその痛みや違和感の原因が事故そのものと因果関係があると認められることが大切ですから、些細なことでも専門家に相談するようにしましょう。

また下記には交通事故で起こる後遺症の等級について書かれている記事を引用してみたいと思いますので、ぜひ、参考にしてみてください。

後遺障害14級とは

後遺障害14級は、等級の中で最も軽い等級になりますが、簡単に認定されるわけではありません。

後遺障害14級は、全部で1号〜9号までの9つの等級があります。

特に認定されることが多いのは14級9号「局部に神経症状を残すもの」です。

むちうちの場合に後遺障害に認定されるのは、ほとんどが14級9号です。

(中略)

後遺障害14級の認定率と全体の認定率

損害保険料率算出機構が発表している2020年度版「自動車保険の概況」によると、2019年度に自賠責保険が賠償金を支払った件数は、106万9866件とされています。

その中で、何らかの後遺障害等級に認定された件数は5万2541件です。

14級のみの認定件数は3万0675件と発表されています。

引用元:自動車保険の概状2020年度版(P22,P38)|損害保険料率算出機構

したがって、後遺障害の全体の認定率は約4.9%となり、14級の認定率は約2.8%ということになります。

もっとも、上記の支払件数(106万9866件)は、後遺障害の申請をせずに傷害部分(慰謝料、治療費、通院交通費、休業損害など)のみで申請された案件と死亡案件も含まれているため、純粋に後遺障害申請をした場合の認定率ではありません。

引用:弁護士法人デイライト法律事務所

https://www.daylight-law.jp/accident/qa/qa258/#14-5